社長取材企画

【後編】
神戸どうぶつ王国の佐藤園長と対談!
飼育動物の幸せを考えた「環境エンリッチメント」とは?

「環境エンリッチメント」という言葉を聞いたことはありますか?
環境づくりの工夫についてクローズアップ!

はじめに
前回は環境エンリッチメントの考え方やハシビロコウがいるビッグビルにおける工夫を紹介しました。
まだ読んでいらっしゃらない方はその記事を先にお読みすることをおすすめします♪
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今回は、環境エンリッチメントを取り入れた環境づくりによるハシビロコウの変化はあったのでしょうか?
そして、ペットのためにはじめられることはあるのでしょうか?
そんな疑問についても神戸どうぶつ王国の佐藤園長に伺ってみました!

佐藤園長と社長やまちゃん

環境を整えた効果は?
前編では、環境エンリッチメントに配慮した環境づくりについてご紹介しました。
ビッグビルが建設(2021年4月)されてからおおよそ2年が経過し、ハシビロコウに変化はあったのでしょうか?

佐藤園長に伺うと、以前飼育していた頃よりもハシビロコウ本来の行動が安定して見られるようになったと話します。
さらに繫殖に関することとして、昨年はよく飛び・よく食べ・雌雄の距離が近づき・挨拶行動など繁殖期ならではの行動も見られたとのことです。

良い兆候は見られたものの、成功へ導くためには検証や改善が必要なポイントがまだあると佐藤園長は話します。
ハシビロコウの繁殖成功にむけて今後着目されるポイントは…「ハシビロコウの視覚」!

ハシビロコウ

どんな世界をみているの?
私たち人が見ている世界を動物がどう見えているか考えたことはありますか?
人と比較した際に、動物では見える色・距離・範囲などが異なる場合が多いです。

ハシビロコウも例外ではなく、人が見える3原色(赤・青・緑)に紫外線領域を合わせた4原色の色覚を持つそうです。
紫外線領域も見えていることからビッグビルで見ている世界は、ハシビロコウと人で全く異なる可能性があると佐藤園長は話します。

ハシビロコウの目

例えば、施設内に設置されている非常灯のサイン看板は常時点灯しています。
日中はお客様が入園されるため点灯は必須ですが、スタッフもいなくなる夜間はそこにフタをして明かりが漏れないようにしています。
その理由の一つが「光量」。 大自然の中で夜に光源としてあるのは、月と星です。その明るさは月で1ルクス以下、星は0.01ルクス以下とのことです。 それに対してこの非常灯のサイン看板は10ルクス程度であり、なかなか人からしたら気づきにくい部分ですが、ハシビロコウから見たらそれは非常に明るいものとして認識するそうです。

ビッグビル内の非常灯のサイン看板

では日中はどうでしょうか?
ビッグビルではガラスによって外界と仕切られており、現在そのガラスによりUV-Bという紫外線がカットされていると話します。 未だハシビロコウにおける繁殖のトリガーが明確に解明されていません。 その中で「光」はハシビロコウの性腺を刺激する可能性があり、繁殖成功に向けて佐藤園長は何かしらの要因がここに隠れているのではないかと考えていらっしゃいました。

よりハシビロコウの生息地(アフリカの湿地)に近い環境を作る為に、今後は「光」をテーマとした更なる検証と改善を図る予定とのことです。 ハシビロコウの繁殖が成功することを祈り、ビッグビルの更なる発展とハシビロコウのペアリングを見守っていきたいと思います!
ペットに対してできることは?
佐藤園長との対談ではビッグビルを例にした環境エンリッチメントについてお話を伺ってきましたが、ペットに対してオーナー様ができることはあるのでしょうか?

動物が人と一緒に生活する為には、その動物種についてオーナー様が勉強する機会が必要であると佐藤園長は話します。 ペットが徐々に長寿化している中で、各動物種に対する正しい知識が無いと、時には短命になってしまう可能性があるそうです。 そのためには動物園においても同様ですが、ペットにおいても「限られたスペースの中でいかに運動量を多くするための配慮」とそれに付随した「食事管理」がいかにできるかが健康を維持する上で重要なポイントになると考えていらっしゃいました。

最後にお家でできる考え方や環境づくりについて、2つのキーワードを佐藤園長から教えていただきました。 キーワードをもとに、これからご自宅でもできそうな工夫をイースターで考えてみましたのでご紹介します!

佐藤園長と社長やまちゃん

●相互交流
動物自身が「選べる環境」をオーナー様が提供し、人と動物の双方が良い関係を維持し交流することを「相互交流」と呼ばれていらっしゃいました。

例えば、イングリッシュアンゴラの記事でご紹介した「セーフティエリア」は、イングリッシュアンゴラ自身が「今は触ってもいいよ」「今は休憩したいから触らないでほしいな」という選択ができるようになっていました。

ぴょんタッチにある「セーフティエリア」でゆっくり休憩するイングリッシュアンゴラ
セーフティエリア

動物が自分の意思で選べる環境があることにより、人のことが嫌いになってしまったり人が怖くなってしまったりする負の感情を抱いてしまう可能性を最小限に抑えることができます。 人と動物が良い関係性を築いて維持するためには、動物の行動を注意深く観察しながら“今“どのような気持ちかを考えて接することが大切です。

動物園の動物だけではなく、お家のウサギさんにもその時々の気持ちがあります。 多くのオーナー様は行動や顔つきなどを“無意識”に読み取りながら、ウサギさんと良い関係性を築かれていらっしゃるかと思います。 “意識”して行動を観察することにより、ウサギさんが取った選択をより理解できる可能性があるかもしれません! さらにウサギさんが選択を行う為に隠れられる場所や掘る・齧るなどウサギさんならではの行動ができるようなおもちゃを準備してみるのはいかがでしょうか!

●コントラフリーローディング
こちらは聞き馴染みがない方が多い言葉かもしれません。 「コントラフリーローディング」とは、研究により動物が食事を何もせずに得るよりも何かしら頑張って得たものの方を好むことを示した言葉です。 ハシビロコウのような狩りを行う動物であれば自分で狩りを行って手に入れた食事、ウサギさんのような草食動物であれば時間をかけて見つけた食事の方がより満足度が高く・おいしく感じるのかもしれません。

美味しそうな葉っぱを食べるために、頑張って背伸びしながら食べているイングリッシュアンゴラ
背伸びして木の葉を食べるアンゴララビット

お家ではどんな工夫ができるのでしょうか?
例えばおやつを探してもらうために牧草の中に隠したり、爪切りなど苦手なことを頑張ったあとに普段食べられないとても美味しいものが食べられるなどの工夫はしやすいと思います。 そしてその美味しい食事を食べる為にたくさん探す行動を起こすことは、ウサギさんの運動量の増加にも繋がります。 このように“ウサギさん自身が頑張った結果として食べられるご飯“のタイミングを工夫して作ってみるのはいかがでしょうか!

最後に
2つの記事に分けて、飼育動物が幸せに過ごせるように配慮した環境づくりについて様々な視点からご紹介しました。 ご飯や運動に関する健康維持は考える機会が多いと思いますが、ウサギさんを取り巻く環境づくりに目を向ける機会は比較的少ないかもしれません。 ウサギさんのより幸せな生活のために、実施できそうなことがあればトライしてみるのはいかがでしょうか? もしかしたら、ウサギさんがとても喜んでくれるかもしれませんね♪

今回取材にご協力いただきました神戸どうぶつ王国は、今年からの新しい展示スペースが2か所オープンしました!

●リスの森
3月からオープン!
二ホンリスが木々の生えるスペースの中で自由に駆けまわる愛らしい姿が見られる展示場。

●モモンガの森
4月からオープン!
森の夜の中を躍動感あふれる姿で活動する夜行性動物がみられる昼夜逆転した展示場。

さらに新しい動物種も見られるようになりました!
●ピグミーマーモセット

ぜひハシビロコウをはじめとした、個性あふれる動物たちのいきいきとした姿を見に神戸どうぶつ王国に遊びに行ってみてくださいね☆

佐藤園長と社長やまちゃん


【神戸どうぶつ王国】
取材にご協力いただき、ありがとうございました!


ハシビロコウのオフショットも公開!
木の枝の上に立っているハシビロコウ
ハシビロコウ

頭を掻いているハシビロコウ
ハシビロコウ