はじめに
「環境エンリッチメント」とは飼育動物の福祉向上と心身の健康を維持するために、動物本来の本能的な行動を引き出せるように飼育環境を整えることをいいます。 大きく分けて、空間・採食・社会・感覚・認知の5つの要素に分類することができます。 もとは野生動物を飼育する動物園や水族館等における考え方でしたが、最近では犬や猫、うさぎといったペットにも普及しはじめています。
ではペットも含めた飼育動物の「環境エンリッチメント」はどのように考えていけばいいのでしょうか?
神戸どうぶつ王国にある「ハシビロコウ生態園 Big bill(以下、ビッグビル)」を例に佐藤園長にお話しを伺いました!
神戸どうぶつ王国の「ハシビロコウ生態園 Big bill」 *ひっそりと2羽のハシビロコウが隠れています。
はじめに、環境エンリッチメントを考える際に最も重要なことは、動物が自然界で行っている行動レパートリーをどれだけ行えるようにできるかであると佐藤園長は話します。 ハシビロコウを例にすると、飛ぶ・狩りをする・身を隠す・巣を作ることなどが挙げられます。 そのためには、どのような工夫が施されているのでしょうか?
座って休息をとるハシビロコウ
飛ぶために羽ばたくハシビロコウ
何かを見つめるハシビロコウ
神戸どうぶつ王国の「ビッグビル」
佐藤園長が施設を作る際は、まずその施設を作る目的を考えるそうです。 ビッグビルの建設ではお客様にハシビロコウを見ていただくほか、飼育下における世界的な成功例がわずか2例しかないハシビロコウの繁殖を成功させることが目的として設定されました。 ハシビロコウは年々生息数が減少しており、絶滅危惧種として指定されている鳥類です。
●生活環境への配慮
繁殖の成功に向けて、ハシビロコウに適した生息環境を作る必要があり、ここで最も参考になるのは野生のハシビロコウが生息している自然環境です。 いかに生息環境に近づけるかを考えたスペース作りは「生息環境展示」と呼ばれ、ビッグビルではその中に環境エンリッチメント要素も盛り込まれているそうです。
ハシビロコウはアフリカの湿地に生息しています。
そこは熱帯気候であり、季節は降水の量により「乾季」と「雨季」に分けられます。なんとビッグビルでは、その気候を再現するための工夫が施されています!
アフリカの湿地と同じようにビッグビル内の池の水位も低く調整できるように設計されています。 鳥であるハシビロコウのために池の水位を下げる必要性はあるのでしょうか?と考えてしまいますが、野生下では「乾季」に水位が下がることによりハシビロコウがエサとなる魚をみつけやすくなるそうです。
そして降水量が多い「雨季」を再現する際は、不定期におおよそ15分程度のざーっと降ってピタッと止む特徴的な雨を再現できる「人工降雨設備」が設置されています。 佐藤園長は実際に現地に赴いて雨季の雨を経験されたことがあるそうです!
さらに、自然環境を再現するためにアフリカの湿地に生える植物を植えているとのことです。
自然環境を忠実に再現する為に、空間づくりだけではなく天候やそれに起因する土地の変化までも再現できるように工夫されていることは驚きの連続でした。
●採食への配慮
佐藤園長が環境エンリッチメントのなかで最も力を入れているのは「採食エンリッチメント」であり、その理由は、動物が様々な行動レパートリーをもつ中で最もよく動くのは食事を求めている時だからと話します。
ハシビロコウは魚を主食とし、野生下ではハイギョなどを捕食します。 そのためビッグビルにも本能的な捕食行動がとれるようにエサの狩場となる池があり、その中には複数種類の魚がいました。
ハシビロコウはジーっとして「動かない鳥」として有名ですが、その行動は野生下で捕食するハイギョが呼吸するために水面へ上がってくるのを狙うためだそうです。
●同居動物における配慮
「動かない鳥」というイメージが強いことから温厚な動物かと思いきや、ハシビロコウは単独生活者(繁殖期を除く)であり、野生下ではエサとなるハイギョがいるエリアを守る為に個体間の激しい争いが起こるほど縄張り意識が強い動物とのことです。
たとえ雌雄のペアで飼育していても争いが起こる可能性があり、神戸どうぶつ王国ではスタッフのいない夜間は予期しない争いを防ぐために1羽はバックヤードにつれていくそうです。 またビッグビル内には、ハシビロコウ以外の鳥類もおり、野生下で共存関係にある種類を選定しているとのことです。
ビッグビル内にいたシロクロゲリ
このようにハシビロコウへかかるストレスについても配慮された工夫が施されていました。
「環境エンリッチメント」とは飼育動物の福祉向上と心身の健康を維持するために、動物本来の本能的な行動を引き出せるように飼育環境を整えることをいいます。 大きく分けて、空間・採食・社会・感覚・認知の5つの要素に分類することができます。 もとは野生動物を飼育する動物園や水族館等における考え方でしたが、最近では犬や猫、うさぎといったペットにも普及しはじめています。
ではペットも含めた飼育動物の「環境エンリッチメント」はどのように考えていけばいいのでしょうか?
神戸どうぶつ王国にある「ハシビロコウ生態園 Big bill(以下、ビッグビル)」を例に佐藤園長にお話しを伺いました!
神戸どうぶつ王国の「ハシビロコウ生態園 Big bill」 *ひっそりと2羽のハシビロコウが隠れています。
はじめに、環境エンリッチメントを考える際に最も重要なことは、動物が自然界で行っている行動レパートリーをどれだけ行えるようにできるかであると佐藤園長は話します。 ハシビロコウを例にすると、飛ぶ・狩りをする・身を隠す・巣を作ることなどが挙げられます。 そのためには、どのような工夫が施されているのでしょうか?
座って休息をとるハシビロコウ
飛ぶために羽ばたくハシビロコウ
何かを見つめるハシビロコウ
神戸どうぶつ王国の「ビッグビル」
佐藤園長が施設を作る際は、まずその施設を作る目的を考えるそうです。 ビッグビルの建設ではお客様にハシビロコウを見ていただくほか、飼育下における世界的な成功例がわずか2例しかないハシビロコウの繁殖を成功させることが目的として設定されました。 ハシビロコウは年々生息数が減少しており、絶滅危惧種として指定されている鳥類です。
●生活環境への配慮
繁殖の成功に向けて、ハシビロコウに適した生息環境を作る必要があり、ここで最も参考になるのは野生のハシビロコウが生息している自然環境です。 いかに生息環境に近づけるかを考えたスペース作りは「生息環境展示」と呼ばれ、ビッグビルではその中に環境エンリッチメント要素も盛り込まれているそうです。
ハシビロコウはアフリカの湿地に生息しています。
そこは熱帯気候であり、季節は降水の量により「乾季」と「雨季」に分けられます。なんとビッグビルでは、その気候を再現するための工夫が施されています!
アフリカの湿地と同じようにビッグビル内の池の水位も低く調整できるように設計されています。 鳥であるハシビロコウのために池の水位を下げる必要性はあるのでしょうか?と考えてしまいますが、野生下では「乾季」に水位が下がることによりハシビロコウがエサとなる魚をみつけやすくなるそうです。
そして降水量が多い「雨季」を再現する際は、不定期におおよそ15分程度のざーっと降ってピタッと止む特徴的な雨を再現できる「人工降雨設備」が設置されています。 佐藤園長は実際に現地に赴いて雨季の雨を経験されたことがあるそうです!
さらに、自然環境を再現するためにアフリカの湿地に生える植物を植えているとのことです。
自然環境を忠実に再現する為に、空間づくりだけではなく天候やそれに起因する土地の変化までも再現できるように工夫されていることは驚きの連続でした。
●採食への配慮
佐藤園長が環境エンリッチメントのなかで最も力を入れているのは「採食エンリッチメント」であり、その理由は、動物が様々な行動レパートリーをもつ中で最もよく動くのは食事を求めている時だからと話します。
ハシビロコウは魚を主食とし、野生下ではハイギョなどを捕食します。 そのためビッグビルにも本能的な捕食行動がとれるようにエサの狩場となる池があり、その中には複数種類の魚がいました。
ハシビロコウはジーっとして「動かない鳥」として有名ですが、その行動は野生下で捕食するハイギョが呼吸するために水面へ上がってくるのを狙うためだそうです。
●同居動物における配慮
「動かない鳥」というイメージが強いことから温厚な動物かと思いきや、ハシビロコウは単独生活者(繁殖期を除く)であり、野生下ではエサとなるハイギョがいるエリアを守る為に個体間の激しい争いが起こるほど縄張り意識が強い動物とのことです。
たとえ雌雄のペアで飼育していても争いが起こる可能性があり、神戸どうぶつ王国ではスタッフのいない夜間は予期しない争いを防ぐために1羽はバックヤードにつれていくそうです。 またビッグビル内には、ハシビロコウ以外の鳥類もおり、野生下で共存関係にある種類を選定しているとのことです。
ビッグビル内にいたシロクロゲリ
このようにハシビロコウへかかるストレスについても配慮された工夫が施されていました。
さいごに
今回は、ビッグビルを例に生息環境に基づいた環境づくりの工夫を教えていただきました!
次回は、ビッグビルの建設によりハシビロコウに変化はあったのか?、そしてまだ100%再現できていないと話す佐藤園長が今後改善ポイントとして着目されることについてご紹介したいと思います。
お楽しみに!
今回は、ビッグビルを例に生息環境に基づいた環境づくりの工夫を教えていただきました!
次回は、ビッグビルの建設によりハシビロコウに変化はあったのか?、そしてまだ100%再現できていないと話す佐藤園長が今後改善ポイントとして着目されることについてご紹介したいと思います。
お楽しみに!
【神戸どうぶつ王国】
取材にご協力いただき、ありがとうございました!
ぜひハシビロコウを見に神戸どうぶつ王国へ遊びにいってみてくださいね♪