動物病院取材企画

ウサギさんの避妊手術、どんな流れなの?

準備~手術後のケアまでの流れをご紹介!
@いぶきの動物病院

ウサギさんをお迎えした後に、比較的すぐやってくる考え事の一つとして、「避妊・去勢手術をするかどうか」があげられます。 お迎えしたばかりなのにすぐに手術のことを考える場面が訪れるとなると、なんだか不安になってしまいますよね。

そこで今回は避妊手術のメリット・デメリットと実施する際の流れについて、「いぶきの動物病院」での例を島田先生にご紹介いただきました!
避妊手術のメリット・デメリット
メリット
・男の子より女の子で多い「生殖器の病気」を予防できること。
 <生殖器の病気>子宮蓄膿症、子宮内膜炎、卵巣腫瘍、乳腺腫瘍など
・多頭飼育の場合には、望まない妊娠や交配を防ぐことができること。
・発情に伴う体調の変化やストレスから解放されること。

デメリット
・麻酔をかけて実施する必要があり、健康な子にもそのリスクは少なからず生じること。
・女の子の場合には開腹手術となり、男の子と比べると侵襲性が高いこと。
・出産ができなくなること。
・太りやすくなること。

*上記はウサギさんの避妊手術における一般的なメリット・デメリットを記しております。
いつ実施するのがベスト?
女の子の避妊手術の場合には、おおよそ生後半年~1歳の間が理想であると島田先生は話します。

その理由の一つとして、加齢とともに女の子は腹腔内(お腹の中)や子宮の周りに脂肪が増える傾向にあり、理想の実施時期と比べてそれを避けながら実施する必要があるため手術時間が長くなります。

その一方で時には理想実施時期内でも実施を一考することがあるそうです。 それはどんな時なのでしょうか?

① 小型種である場合
ネザーランドドワーフなどの小型種の場合には、万が一麻酔下における突発的な変化が生じてしまった時、大型種と比較すると体が小さいことからその対応が難しくなるそうです。 そのため、その子にまだ成長の余地がある場合には実施を少し遅らせてあげることが安全に実施するためにできる選択の一つとなるそうです。

② 換毛期・真夏シーズンの場合
特に体調の変化が生じやすいシーズンは、ウサギさんの安全に配慮して実施時期をずらすようにされているとのことです。

③ ウサギさんのケアを行う準備期間を設ける場合
獣医療に関する教科書や海外などにおいて避妊手術はさらに若齢での実施を推奨されていることがありますが、避妊手術を受ける場合にはオーナー様とウサギさんも準備が必要になります。

準備が必要な理由は?
いぶきの動物病院ではウサギさんとその後のケアを行うオーナー様のことを一番に想い、準備が不十分な状態で実施するよりも、しっかりと関係性を築いてからの実施を推奨しているとのことです。

良好な関係性が必要な理由は退院後のケアを円滑に行うためです。 ケアが十分にできない場合には、オーナー様またはウサギさんが怪我をしてしまったり、術創が汚染されてしまったりなどのリスクが生じます。

このような場合にも、オーナー様とウサギさんとの日常的なコミュニケーションが重要となるのですね♪
避妊手術までの流れ
動物病院によって避妊手術実施の流れは変わりますが、一例としていぶきの動物病院での避妊手術までの流れについてご紹介します。

① 相談
まずはいぶきの動物病院でウサギさん・オーナー様・獣医師の3者で実施について相談と検討を行います。その際には避妊手術を実施する際のメリット・デメリットを含めた詳細な説明が行われます。 いぶきの動物病院では、オーナー様にわかりやすく手術内容やその流れについてご理解いただけるようにオリジナルのハンドアウトを作成されていました。
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*不妊は、避妊と同じ意味になります。

ここで島田先生が特に着目するポイントは「オーナー様とウサギさんの関係性」です。 手術後のオーナー様がウサギさんに触れられるかどうかや、退院後にオーナー様がウサギさんに投薬などのケアができそうかを確認します。 そして万全の準備を整えるために個々のご家庭に合わせて必要なことが何かを考えていきます。

② 事前検査
手術を行う前に、ウサギさんの健康状態の確認を行います。体重測定・聴診・視診を含めた身体検査のほか、血液検査を実施します。

この血液検査によって肝臓や腎臓の機能、貧血の有無、出血を止める為の血小板の数、炎症を示す白血球の数などに問題がないかを確認します。

③ オーナー様がする手術準備
いぶきの動物病院では、ウサギさんは基本的に避妊手術を受けた後は1日入院して帰宅するスケジュールとなります。そのため、ウサギさんがいつも食べている1日分のお食事をお泊まりセットとして準備していただきます。

④ 手術日
いぶきの動物病院でウサギさんの手術前の最終確認を行い、問題が無ければ手術を実施します。
避妊手術後の流れ
① 手術後
術創を守るためにストッキネットで作ったお洋服を着せます。 手術直後

盲腸便を食べられるように、そしてストレスに配慮するためにエリザベスカラーは基本的には使用しないそうです。

ウサギさんは絶食期間が長くなると消化器の運動が低下してしまう可能性が高いことから、麻酔から醒めた後はウサギさん用の流動食をたべてもらいます。 そして次の日の退院にむけ、通常食を食べられるよう入院室内に準備します。
手術直後 手術直後

② お迎え
退院に向けて準備を行います。
手術直後

そしてオーナー様がお迎えにこられたら、大きく分けて2つの説明を獣医師より行います。

・手術内容の説明
まずは実施した手術内容の説明です。 手術直後

さらにウサギさんが頑張った証明として摘出した組織を見ながらの説明もあるそうです(オーナー様にご了承いただいた後に、摘出された組織が診察室内に運ばれてきます)。

・退院後のケアの説明
しばらくの間、退院後も術後のケアが必要となります。ご自宅では術創を清潔に保ちながら、術創の感染を防ぐための投薬が必要となることが多いです。

そのためお薬とその投薬方法について説明があります。このケアを行う際に「ウサギさんとオーナー様の関係性」が重要となります!

③ 手術後のケアと通院
術創が完全に閉じるまで定期的に検診を受けながら、ご自宅でウサギさんのケアを継続的に行います。
避妊手術をしない場合
ここまでは避妊手術をする場合についてご紹介しました。
一方でウサギさんのことを一番に考えた際に、避妊手術をしないと決断した場合には何かウサギさんのためにできることはあるのでしょうか?

・日常的な健康チェック
避妊手術を行わない場合には、生殖器系の病気が発生する可能性がゼロではありません。そのため、万が一に備えて日常的な健康チェックが重要となります。
注目していただきたいポイントはウサギさんのおトイレです。

✓血尿していませんか?

✓出血はありませんか?

早期発見するためにも毎日のお掃除の際にチェックしてみましょう👀

・健康診断
どの病気も早期発見ができれば、治療の際のウサギさんの負担は少なくなります。 その早期発見をするための一助となるのが健康診断です。

✓頻度:年に1~2回程度が目安

✓5歳頃からは心配事に応じて実施することが望ましい
➡年1回は血液検査を行うとより◎

オーナー様によっては爪切りなどのウサギさんのお手入れも含めて健康診断を行う方もいらっしゃるそうです。
手術直後

心配事がある際には、早めにかかりつけの獣医師にご相談くださいね!
さいごに
今回はウサギさんの避妊手術についてご紹介しました。

女の子のウサギさんを飼育している方は避妊手術について、一助となる情報になりましたか? もしこれから「検討したい!」と考えられる場合には、まずはかかりつけの獣医師にご相談してみてくださいね。
注意)あくまでこれは一例です。動物病院様によって避妊手術実施の流れが異なる場合がございますのでご了承ください。
取材のご協力ありがとうございました!

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